オリンピックを終えて
入江則裕
8月8日に数年来騒がせていた東京2020オリンピックが、無観客でありましたが盛況のうちに終わりました。国立競技場の消えていく聖火を見ながら特別な寂しさを感じています。聖火ランナーに対する想いは、真空ジャーナルの記事に書かせていただきましたが、今回のイベントは私の子供の時の思い出や亡き父と今の私と繋ぐ大切な糸のようだと改めて感じます。僅か1分半の出来事でしたが、父と歩んできた57年間がそこに詰められたような不思議な時間でした。
4月22日朝、愛媛県愛南町のホテルから家族と社員3名に見送られて、集合場所の愛南町市民会館にむかった。前日の松山の聖火リレーは、新型コロナ感染症のため、全国で初めて沿道リレーが中止、トーチキッスのセレモニーのみ行われました。幸い愛南町は沿道の人数制限がありましたが、なんとか走れることが出来ました。
集合場所につくと、町長らしき方が飛んできて、「申し訳ありません。沿道に600人小中学生の参加を予定していたのですが、今回の感染症で人数制限させていただきました。」と話す。小さな田舎町にとっては、今世紀最大のイベントになり観光客も多く来るはずだったのに無念だったと思います。でも、聖火リレースタッフや役所の方々の開催への熱意が私を迎えてくれました。
聖火ランナーのウェアに着替え、説明を受け、スタッフの拍手の中、送迎のバスに乗って、スタート地点の馬瀬公園の駐車場に向かいます。
朝、曇っていた空はいつの間にか晴れわたり、森の木漏れ日の中バスは走って行きます。
駐車場には沢山のスタッフや報道陣、バス、車があり、ランナーの到着を今かと待っている。
バスの中でスタッフに「すごい人ですね。」と言ったら、「あなた方は、この街にとっては超VIPですから」。それを聞いて急に恥ずかしくなり、足が震え出した。
そのスタッフもこの聖火リレーために、半年仕事を休んでスタッフとして参加しているそうだ。「あなた方は選ばれた人です。我々はそれをサポートするのが喜びです。だから、頑張ってください。」。
バスは駐車場からコース内の受け渡しポイントに向かう。さながら戦場に向かう勇者を送り出すように拍手が起こる。緊張感が高まる。
前走者から聖火を受け取り、走り、次走者に渡す。あっという間の出来事だった。
その時の気持ちを表現することは難しい。私は心のリミッターを外し、何も考えないで、思いっきり嬉しさを表現したつもりです。人生最高の笑顔で家族、友人、スタッフ、私の人生を支えた人々、そして、今の私を支えてくれる会社のみんなに感謝を伝えたつもりだったが、伝わったかな?
聖火リレーの「選ばれた人」、それは同時に沢山の人の夢をつなぐ責任を背負った人のことだ。オリンピックが無事開催できて人々に感動を与えた。私はその責任を果たすことが出来たと思っている。
次のオリンピックはパリで開催されます。無観客で開催された東京大会と違って沢山の人がパリに集まります。その人々を運ぶ鉄道にIKCのコンサベータが使われているはずです。東京でできなかった夢をフランスで実現する。なんて素晴らしいことだろう。
その夢をつなぐのは、次に「選ばれた人」それは皆さんです。