A社の産業用ロボットは、真空状態など厳しい環境下でのモノづくりに使われており、多くの実績を上げていた。
特に、真空やクリーンルームなど特殊な現場で使用するロボットは、アームの駆動部や接続部の油圧ユニットを気密性の高い伸縮配管で製作されていた。ロボットの異常は即ライン停止という事態を引き起こすため、A社では気密伸縮配管の設計、各パーツ、ユニットの溶接、組み立てには、細心の注意をはらっていた。
しかし、気密伸縮配管の設計、製造には相当な時間とコストがかかっていたことから、社内ではこの効率について問題視されていたのだ。
時間とコストがかかってしまう主な理由は、次の2つであった。
1つは気密伸縮配管の設計、部材調達に関することである。A社ではエンドユーザーの仕様に合わせて、規格品のベローズや配管類を選定設計し、一番安価なメーカーもしくは代理店から購入していた。しかし、型番の選定や寸法、価格の確認に時間がかかり、その上納品された部品のネジ位置のずれやベローズの動作確認など、後処理にも工数をとられていた。
2つ目は溶接技術である。A社が通常行っている溶接は一般的なもので、気密性を必要としていなかった。そのため熟練した溶接工が作業を行っても、気体漏れが起きてしまい、最終テストに合格するユニットは3セット中1セット程度と不良の方が多かった。また溶接の不備が原因と思われる故障も後を絶たなかった。
A社内ではこれら現状を踏まえ、配管設計や気密溶接を自社で行うことに限界を感じていたが、具体的な対策が見出せないまま、時間だけが過ぎていった。
規格品を組み合わせた選択設計や部材調達、納品物の後処理に工数がとられ、時間とコストがかかりすぎる
気密溶接の技術レベルから、製造するユニットの合格品の割合が低く、効率が悪い