技術情報|真空バルブとは?

真空ゲートバルブとは

真空ゲートバルブは真空装置内で各種基板の表面処理を行なうため、真空と大気、もしくは圧力が異なる真空空間を隔離しシールを行なう機能が要求されます。近年の真空装置の大型化に伴い、真空ゲートバルブの開口サイズも大型化の要求が増加しました。真空ゲートバルブは弁体の動作方向により以下の3通りの仕様に分類できます。

①逆圧仕様:
真空側から大気側(低圧⇒高圧)に向かって弁体をシールさせる。(水を流している蛇口に掌を当てて水を止めようとするイメージです)
②同圧仕様:
弁体が遮蔽する二つの空間がほぼ同じ圧力
③正圧仕様:
大気側から真空側(高圧⇒低圧)に向かって弁体をシールさせる。(お湯を張った浴槽の中から、排水している状態で栓を締めるイメージです)

ゲートバルブ動作原理(差圧キャンセル構造動作原理)

ところで大気圧は約100kPaで1cm2当りおよそ9.8N(≒1kgw)の重量に相当する圧力である事は皆様もご存知と思います。もし真空ゲートバルブの(矩形)開口サイズが300mm × 2000mmとすると、従来の弁構造で上記①の逆圧仕様では弁体をシールさせる力量:Fは 図1の断面モデルで以下の計算となります。

ゲートバルブ構造図

F=(P1-P0)A+f
 ≒ 100kPa×0.6m2 + 10kN = 70kN(≒7ton)

逆圧仕様の場合
F=(P1-P0)A+f
P1:
大気圧【Pa】
P0:
真空【Pa】
A:
弁板受圧面積(=0.3×2【m2】)
f:
Oリングの潰し力【N】

荷物を載せた4tonトラックの総重量(8 ton)と同じ位のシール力量が必要になります。つまりこれだけの力量で100万回も動作するバルブは、重量もサイズも大きく、弁体の剛性も高める必要があり、その結果製造コストも高くなり製造する立場から見ると弊害ばかり残ってしまいます。

 

そこで入江工研ではゲートバルブ開口サイズの大型化で課題となっていた以上の問題を解消するため「差圧キャンセル弁」を開発しました。

差圧キャンセル構造について説明します。

以上の構造を断面図にすると下図2のようになります。バルブにとり最も厳しい使用条件である"逆圧仕様"の場合弁板の金属ベローズ内部はシール用プレートの"導入口"から大気圧を導入する為、シール用プレートの弁座側と金属ベローズ内部は差圧が無くなります。

金属ベローズには有効受圧面積(およそ内・外径の中間径相当)がありますが、この面積分は圧力差がないため、シール用プレートへは差圧力が作用せず力量的に平衡状態になります。

つまりこの差圧キャンセル構造により弁体をシールする力量を大幅に軽減する事ができると云うことになります。

この時仮にその金属ベローズの有効受圧面積がシール用プレートの受圧面積と同等である場合を想定して必要シート力:Fの計算をすると

F =(P1-P0)A + f=(P1-P1)A + f=f

となりほぼOリングの潰し力だけで済むことになります。非シール側のプレートは差圧力を受けますが、ベローズの変位によりバルブケースの弁座側の反対面に突き当たり、金属ベローズ有効面積分の差圧力を吸収します。従って、以下のような効果を得ることが出来ます。

真空ゲートバルブ

注1)製品では金属ベローズ内にエアシリンダを設置し、シール駆動を行なっています。

注2)矩形ゲートバルブの場合、弁板内に丸形状の金属ベローズを装着している為、金属ベローズの有効受圧面積は弁板の受圧面積に対し約70%程度となっているため、差圧をキャンセルする割合も約70%程度の効果を発揮しています。