医療機器用に、超小型ベローズの商談を持ちかけられた、精密部品メーカーのC社。
このベローズはポンプの代用として複数搭載されることから、量産になれば大口の受注が見込めることや、競合にも同じ相談がされているため、プロジェクトチームを立ち上げて万全な体制で臨むことにした。
しかし、当初考えていた方法では実現が難しいことがわかり、進捗は難航した。
というのも、C社のベローズが採用されるためには、この医療装置メーカーが想定している仕様より、耐久性に優れたものを提案したほうが、差別化できると考えていた。そこで実績が豊富なシリコン製ベローズの中でも、厚口の素材を使用して内径を10mm以下にする方向で検討を進めていた。
ところが、後日医療装置メーカーから送られてきた追加の仕様書では、このベローズの内部に酸や高温の液体、人体に使う薬液を流し込むことが判明。いくら厚口でもシリコンでは劣化してしまう不安があったのだ。
シリコン製ベローズをあきらめたプロジェクトチームは、試作品の納期の関係もあるため検討を急いだ。
その結果、酸や高温にも耐えられ、薬液にも安全な「金属製の超小型ベローズをオリジナルで製作してはどうか」という案が出た。調査を進めたところ、素材によっては柔軟に加工ができ、耐久性も十分確保できる特殊な金属も存在するとのことだった。これで、実現に向け可能性が広がった。
しかし、C社は今まで金属ベローズを取り扱ったことがないため、具体的な設計や開発の進め方、調達方法、そのリスクなど、現実的で詳細な情報が何もない。またどうやって入手したらよいかもわからず、せっかく広がった可能性を実現することができそうもなかった。
採用実績のあるシリコン製ベローズでは今回の案件に使用できないことが判明
金属製のベローズを使用する案が出たが、取り扱った経験がなく手順や情報が全くない